ISBN:4061340999 文庫 吉田 ルイ子 講談社 1979/01 ¥520

僭越ながら、初の書評でございます。
もちろん、このサイトの趣旨に関連あるものを・・・ということでご紹介したいのが、フォトジャーナリストである吉田ルイ子さんのハーレムの熱い日々です。
サブタイトルのBLACK IS BEAUTIFULという言葉が示す通り、ハーレムに住む黒人たちの生活をレポートした本です。

吉田ルイ子さんは、1938年生まれ。
交換留学生としてNYに渡った彼女は、もちろん英語はできるものの、ネイティブとの歴然とした差を感じ、普通のジャーナリズム専攻から、フォトジャーナリズムへと専攻を変えたそうです。
たまたま、学生時代にハーレムのアパートに住むことになり、以来、黒人の写真を撮り続けている方ですが、この作品は彼女の処女作だそうです。

この本は、彼女が1961年から10年間、NYのハーレムに暮らしたときの様子を書いています。
出版は1972年という古い本なのですが、活気にあふれた子ども達の描写や、写真の美しさは、現代の私たちが読んでもすごく魅力的で、古さは全く感じません。
20代のころに読んだのですが、彼女の熱い思い、特に黒人たちに注ぐ温かい視線に、すごく共感し、感動しました(^^)。

ジャーナリストということで、固い本だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
平易な言葉で、初めて人種差別というものに出会った衝撃や、黒人達の置かれる状況に驚いたこと、そんな中でも、純粋で人間味あふれる彼らに魅力を感じたことなどが、語られていきます。

彼女自身は、白人男性と結婚生活を送るのですが、やがて破綻します。
その理由「リベラルな白人に対する生理的な嫌悪」というのが、実は私にはすごく共感できた点です。
頭では人種差別をいけないことと理解しながら、実はやはり、優越感というものがどこかに見え隠れするような感覚というのでしょうか。
私自身、白人と一緒に仕事をしたり、いろいろと交流があったのですが、それは実感として感じた部分です(^_^;)。
もちろん、ここまで黒人音楽がアメリカ全体に浸透してきた今では、頭で理解した上に、体でも理解している方も増えてきているのではないかなあとは思ってますけどね。

話はそれましたが、この本を読むと、60年代から70年代までの、ハーレムの激動の歴史がよくわかります。
それまで「黒い自分は醜い、白人様は美しい」と自己否定していた彼らが「黒は美しい」と、黒人であることに誇りを持ち始め、ブラックパワー・ムーブメントが始まっていく様子がすごくドラマティックで、興奮しながら読んだのを覚えています(^^)。
2Pacの母が所属していたブラックパンサー(黒豹党)の活動なども、事細かに書かれていますが、ハーレムのど真ん中で暮らした吉田ルイ子さんだからこそ書けた内容だな・・と思いました。
ただ単に、その活動を褒め称えるのではなく、どうやって生まれ、どのように黒人の中に浸透していったかが、庶民の暮らしに密着し、写真を撮り続けた彼女ならではの視点で語られていくからです。

まだHipHopという音楽が生まれる前のことなので、黒人ミュージシャンの話題は、ジャズアーティストに限られます。
ただ、この時代背景が、HipHopへとつながっていく助走なのかなあ・・・と、個人的に思いました(^^)。

さらっと書くつもりが、なんだか長くなってしまいました(^_^;)。
とりあえず、写真を眺めてるだけでも楽しい本です。
白黒の写真なのですが、それがむしろ、黒人の美しさを強調してる感じで、とても素敵です。
文庫本で安いですし、ぜひ、一読してみてください(^^)。
もちろん、5つ星☆☆☆☆☆です。

PS.吉田ルイ子さん公式サイトはこちら。
http://www.geocities.jp/ruikoy/

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